AWSは、Cross-Zone Network Load Balancer (NLB)において、ゾーンシフト (Zonal Shift) と自動シフト (AutoShift) 機能を新たに提供開始しました。これにより、AWSユーザーはネットワーク負荷分散を行う際に、障害発生時に特定のアベイラビリティゾーン (AZ) から他のゾーンへとトラフィックを迅速にシフトできるようになり、アプリケーションの可用性を維持することが可能です。また、AutoShift機能により、システムは障害検知時に自動的にトラフィックを再分配し、ユーザーの手間をかけずに運用の安定性を保ちます。これにより、ビジネスの継続性を確保しつつ、効率的なリスク管理が可能になります。
新機能の概要
Cross-Zone NLBのゾーンシフト機能は、指定したアベイラビリティゾーンに障害が発生した際、迅速に他のゾーンへとトラフィックを転送する手動シフトオプションを提供します。一方で、AutoShift機能はこれを自動化し、障害が検知されるとシステムが自動的に対応してトラフィックをリダイレクトするため、エンドユーザーへの影響を最小限に抑えられます。これにより、可用性と信頼性が求められるミッションクリティカルなアプリケーションに最適な環境が提供され、障害発生時にも業務運用が円滑に行えます。
想定される利用用途
- 金融サービスの取引システム:高頻度取引など、ミリ秒単位の応答が求められる金融アプリケーションで、障害発生時にも迅速にトラフィックをシフトし、業務を継続。
- eコマースプラットフォームの高可用性:オンラインショッピングサイトで、ゾーン障害が発生しても自動的に負荷を別ゾーンへ転送し、顧客の購入体験を損なわない。
- ゲームのリアルタイム接続管理:多くのプレイヤーが接続するオンラインゲームでの通信トラブルを迅速にシフトすることで、ユーザー体験を維持。
- 医療データ管理と診断システム:リアルタイムで患者データを扱うシステムにおいて、障害時にもスムーズなアクセスを維持し、医療現場の信頼性を確保。
メリット
- 可用性の向上:障害発生時にトラフィックを迅速にリダイレクトできるため、アプリケーションの稼働時間が維持される。
- 自動対応による運用効率:AutoShift機能により障害発生時に自動でトラフィックをシフトでき、管理者の負担が軽減される。
- ユーザー体験の維持:高可用性により、エンドユーザーへの影響を最小限に抑え、サービス品質を確保。
- リスク管理の効率化:障害対応を迅速化することで、運用リスクを軽減し、業務の継続性を高める。
デメリット・課題
- 追加コストの発生:ゾーンシフトとAutoShift機能の使用により、トラフィックの転送コストやインフラコストが増加する可能性がある。
- 設定の複雑さ:ゾーンシフトやAutoShift機能を有効化するための設定には専門知識が必要で、初期設定に手間がかかる。
- 制御の難しさ:システムが自動的に対応するため、手動での制御が制約される可能性があり、特殊な状況には対応が難しい。
- 他ゾーンへの負荷影響:トラフィックが特定ゾーンに集中することで、他のアベイラビリティゾーンに対する負荷が増える可能性がある。
まとめ
Amazon CloudFrontのゾーンシフトおよびAutoShift機能の提供開始により、ネットワーク負荷分散の高可用性とリスク管理が強化されました。金融、eコマース、医療、ゲームなど、高頻度取引やミッションクリティカルなアプリケーションにおいて、可用性の維持やユーザー体験の向上に寄与します。設定の複雑さやコスト増加の課題もありますが、AWSインフラを活用した効率的なリスク管理が可能となり、企業にとって重要なデータやサービスを確実に守るための選択肢が広がります。
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