はじめに
AWSは、新しい「AWS Neuron 2.23」のリリースを発表し、推論、トレーニングの機能強化、および開発者向けツールの改善を行いました。特に注目すべきは、NxD推論ライブラリがベータ版から汎用利用可能(GA)に昇格した点です。このリリースは、多チップ推論のユースケースにおいて推奨されるライブラリとなります。その他、トレーニング向けの新機能や、開発ツールの強化が含まれています。
概要
AWS Neuron 2.23では、推論ライブラリやトレーニング機能のアップグレード、および開発者向けツールの改善が行われ、特に多チップ推論が可能なNxD推論ライブラリがGAとなりました。これには、コンパイル時間を削減するためのPersistent Cacheサポートやモデル読み込み時間の最適化が含まれます。また、トレーニングライブラリでは、Llamaモデル向けの「Context Parallelism」サポートが追加され、PyTorchやJAXといった主要なライブラリへの対応も進化しています。
詳細解説
NxD推論ライブラリのGA化
NxD推論ライブラリは、多チップ推論のために設計されており、この度、汎用利用が可能になりました。Persistent Cacheの導入により、複雑なモデルのコンパイル時間を大幅に短縮することが可能です。また、モデル読み込み時間も最適化され、よりスムーズな推論が実現しました。
新しいトレーニング機能
新たに導入されたトレーニング機能では、「Context Parallelism」がベータ版として登場し、Llamaモデルに対して最大32Kのシーケンス長をサポートしています。さらに、ORPOを使用したモデル整合性を確保し、新しいバージョンのライブラリとも互換性を持たせるなど、トレーニングの質を向上させるための改良が施されています。
開発者向けツールの改善
Neuronカーネルインターフェースでは、新しい32ビットの整数操作、Trainium2に対するISA機能の改良、パフォーマンストューニングAPIが導入されました。また、Neuron Profilerは、5倍速くプロファイル結果の表示が可能な他、タイムラインベースのエラートラッキングとPerfettoを使ったマルチプロセス可視化の改善が行われています。
利用用途・ユースケース
AWS Neuron 2.23は、特に以下のようなユースケースで役立ちます。
– 大規模なデータセットを用いた深層学習モデルのトレーニング
– 多チップを使用したリアルタイム推論タスク
– 複雑なモデルに対する高頻度な推論ワークロード
– 学術研究および開発者コミュニティにおける新しいモデルアーキテクチャの実験および評価
メリット・デメリット
- メリット:
- NxD推論ライブラリのGA化により、多チップ推論がより効率的に行える点
- コンパイル時間の短縮とモデル読み込みの最適化によるパフォーマンス向上
- 新しいトレーニング機能で複雑なモデルをより理解しやすく、迅速に構築できる
- デメリット:
- まだ新しい技術のため、導入には学習曲線がある可能性
- 特定のユースケースに限られた機能を活用するには、技術的な専門知識が必要
まとめ
AWS Neuron 2.23のリリースにより、AWSは推論とトレーニング機能の両方を強化し、よりスムーズな開発プロセスを支援するためのツールを提供しています。特に、NxD推論ライブラリのGA化は、多チップ推論を必要とするユーザーにとって大きなステップです。これにより、開発者は高性能なモデル構築が可能となり、ビジネスでの機械学習の活用をより一層進めることができます。今後も継続的な改善と進化が期待されるAWS Neuronが、どのように企業のイノベーションを支えていくのか注目していきたいところです。
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