AWSは2024年11月、CloudWatch Application SignalsでOpenTelemetry Protocol(OTLP)を使用してAWS X-Rayにトレースデータを送信する機能をリリースしました。この新機能により、開発者や運用担当者は、OpenTelemetryで計装されたアプリケーションからのトレースデータをX-Rayに直接送信し、CloudWatchの高度なアプリケーションパフォーマンス監視(APM)機能を活用できます。
OpenTelemetryとOTLPとは?
OpenTelemetryは、分散トレース、メトリクス、ログを収集するためのオープンソース標準仕様であり、ベンダー依存を排除した計装を可能にします。**OpenTelemetry Protocol(OTLP)**は、このデータを送信するための標準化されたプロトコルです。これにより、異なるモニタリングツール間でのデータ交換が容易になります。
新機能の概要
今回のアップデートで、OpenTelemetryを使って計装されたアプリケーションは、OTLPエンドポイントを介してトレースデータをAWS X-Rayに送信できるようになりました。これにより、CloudWatch Application Signalsの多彩な機能を活用しやすくなります。
主な機能
- 標準化されたダッシュボード
スループット、レイテンシー、エラー率など、重要なアプリケーションメトリクスを一目で把握できるダッシュボードを提供。 - トレーススパンの相関
アプリケーションのトランザクションや依存関係を詳細に分析し、AWSサービスとのやり取りを可視化。 - SLOの追跡
サービスレベル目標(SLO)を設定して、重要なビジネス指標を監視。 - トランザクションスパンの分析
顧客への影響を把握し、トラブルシューティングや障害分析を迅速化。 - マルチサービス統合
X-Rayを活用して、複数のAWSサービスで発生するトレースを統一的に管理。
想定される利用用途
- アプリケーションパフォーマンスの監視
分散アーキテクチャを持つモダンアプリケーションのパフォーマンスを監視。 - トラブルシューティング
問題の発生箇所を迅速に特定し、根本原因を追跡。 - サービスの最適化
アプリケーションの依存関係を分析して、パフォーマンスのボトルネックを特定。 - SLOの管理
ビジネス目標に基づいたサービスレベルの達成状況を評価。
メリット
- シームレスなデータ統合
OTLPを介してOpenTelemetryデータをAWSエコシステムにスムーズに統合。 - パフォーマンスの向上
分散トレースデータを一元管理し、リアルタイムの監視が可能。 - 柔軟な標準対応
OpenTelemetryを採用している企業やプロジェクトにとって、標準的なデータプロトコルでのモニタリングが簡単。 - コスト効率
AWSの既存サービスを活用することで、追加のツール導入を削減。
デメリット
- 設定の複雑さ
OTLPエンドポイントの設定やOpenTelemetry計装が初心者には複雑な場合がある。 - コスト管理の必要性
分散トレースデータの量が増加すると、CloudWatchおよびX-Rayのコストが増大する可能性。 - 互換性の検証
既存のモニタリングツールとの互換性を確認する手間が発生。
利用可能なリージョンと料金
この機能は、CloudWatch Application Signalsが利用可能なすべてのAWSリージョンで提供されています。料金については、Amazon CloudWatchの料金ページを確認してください。
まとめ
AWS CloudWatch Application SignalsがOTLPエンドポイントを介してAWS X-Rayと統合されたことで、OpenTelemetryを採用している開発者にとって、分散アプリケーションのモニタリングとパフォーマンス最適化がこれまで以上に簡単になりました。特に、トラブルシューティングやSLO管理が必要な複雑なアプリケーションにおいて、強力なソリューションとなります。ただし、導入時の設定やコストには注意が必要です。
詳細は、公式発表ページをご覧ください。