2024年11月、AWSはAWS Cloud WANとAWS Direct Connectのネイティブ統合を発表しました。この新機能により、オンプレミス環境とAWSクラウドの接続が大幅に簡素化され、企業が求めるグローバルなハイブリッドネットワーク構築の効率が向上します。
AWS Cloud WANとDirect Connectの統合とは?
AWS Cloud WANは、企業全体で利用可能なグローバルネットワークの統合管理を提供するサービスです。一方、AWS Direct Connectはオンプレミス環境とAWS間の専用ネットワーク接続を実現します。
従来、オンプレミス環境とAWSクラウドを接続する際、AWS Transit Gatewayを介してDirect Connect GatewayとCloud WANを接続する必要がありました。しかし、今回のアップデートにより、Direct Connect Gatewayを直接Cloud WANのコアネットワークにアタッチできるようになり、中間ステップが不要になりました。この変更は、ネットワークアーキテクチャの簡素化と管理の効率化に寄与します。
主な機能と特徴
1. 直接接続の実現
Direct Connect GatewayをAWS Cloud WANに直接接続でき、Transit Gatewayを使用せずにオンプレミス環境との接続を構築できます。
2. 自動ルート伝播
BGP(Border Gateway Protocol)を活用し、AWSとオンプレミス環境間のルートを自動的に伝播します。これにより、複雑なルーティング設定が不要となり、運用効率が向上します。
3. 統合管理
AWS Cloud WANのセグメントやポリシー機能を活用して、ネットワーク全体を一元的に管理できます。これにより、セキュリティ管理も統合され、設定のミスや手間が削減されます。
利用可能リージョン
この機能は以下のAWSリージョンで利用可能です:
- アジアパシフィック(シンガポール、シドニー)
- ヨーロッパ(フランクフルト、ストックホルム、アイルランド、テルアビブ)
- カナダ(カルガリー)
- 米国(東部バージニア北部、東部オハイオ、西部オレゴン、西部北カリフォルニア)
現在、東京や大阪リージョンでは利用できません。
想定される利用用途
1. グローバル企業のネットワーク統合
複数リージョンにまたがるグローバル企業が、オンプレミス環境とAWSクラウドをシームレスに統合し、一貫したネットワーク管理を実現できます。
2. ハイブリッドクラウド戦略の最適化
オンプレミスのデータセンターとAWSリソースを効率的に接続することで、アプリケーションのパフォーマンスや可用性を向上させることが可能です。
3. セキュアなデータ転送
Direct Connectを活用することで、インターネットを介さずにデータを転送できるため、セキュリティが強化されます。
メリット
1. シンプルなネットワーク設計
Transit Gatewayを使用しないため、ネットワーク設計が簡素化され、管理の負担が軽減されます。
2. コスト削減
中間のネットワークゲートウェイを排除することで、運用コストを削減できます。
3. 効率的なルーティング
BGPによるルート伝播を活用し、手動でのルート設定作業を省略できます。
4. 一元管理
Cloud WANの管理機能により、ポリシーやセキュリティ設定を一元化できます。
デメリット
1. 利用可能なリージョンの制限
現在、この機能は一部のリージョンでのみ利用可能で、他のリージョンへの展開には時間がかかる可能性があります。
2. 既存環境の移行負担
Transit Gatewayをすでに使用している環境では、新しい接続モデルへの移行に計画や追加リソースが必要です。
3. 初期設定の複雑さ
初めてこの機能を利用する際には、Cloud WANやDirect Connectの詳細な設定が求められます。
利用方法と手順
- Direct Connect Gatewayの設定 オンプレミス環境からAWSへの専用接続を設定します。
- Cloud WANのコアネットワークにアタッチ Direct Connect GatewayをCloud WANに直接アタッチします。
- ルート伝播の確認 BGPを使用してオンプレミスとAWS間のルートが正しく伝播されているか確認します。
詳細はAWS公式ドキュメントをご覧ください。
まとめ
AWS Cloud WANとDirect Connectの統合は、オンプレミスとAWSクラウド間の接続を簡素化し、効率的でセキュアなネットワーク運用を実現します。特に、グローバルに展開する企業や、ハイブリッドクラウド戦略を採用する組織にとって有益なアップデートです。今後、利用可能なリージョンの拡大も期待されます。