2024年11月、AWSは**Application Load Balancer(ALB)**において、HTTPリクエストおよびレスポンスヘッダーの操作機能を発表しました。この新機能により、コード変更なしでトラフィック管理を強化し、セキュリティを一元的に適用できるようになりました。
新機能の概要
このアップデートでは、HTTPヘッダーの操作をALBで直接行えるようになり、アプリケーションコードの修正を必要とせずにトラフィックの管理とセキュリティ対策を強化できます。主な機能は以下の通りです:
1. ヘッダーのリネーム
ALBが生成する特定のヘッダー(特にTLS関連)を別の名前に変更可能。これにより、既存アプリケーションが期待する形式に適合させることができます。
2. カスタムヘッダーの挿入
レスポンスにCross-Origin Resource Sharing(CORS)やHTTP Strict-Transport-Security(HSTS)といったセキュリティヘッダーを追加可能。セキュリティポリシーを一元管理するのに最適です。
3. 「Server」ヘッダーの無効化
ALBが生成する「Server」ヘッダーをレスポンスから削除することで、サーバー情報の露出を防ぎ、攻撃リスクを低減します。
想定される利用用途
1. セキュリティポリシーの一元化
CORSやHSTSヘッダーをALBで設定することで、全てのアプリケーションに共通のセキュリティポリシーを適用。設定の一貫性を保つとともに、個別アプリケーションでの設定ミスを防ぎます。
2. 既存アプリケーションとの互換性維持
アプリケーションが特定のヘッダー名を期待する場合でも、ALBでリネームを行うことで、アプリケーションコードを変更せずに互換性を保てます。
3. 情報漏洩の防止
「Server」ヘッダーを削除することで、サーバー特定のリスクを軽減。攻撃者に対する情報提供を最小限に抑えます。
4. 開発・運用負担の軽減
アプリケーションごとにヘッダー設定を行う必要がなくなり、ALBで一元管理することで、設定作業の効率が向上します。
メリット
1. セキュリティ強化
HSTSやCORSヘッダーの一元管理により、アプリケーション全体のセキュリティ基準を統一できます。
2. コード変更不要
ヘッダー操作をALBで行うため、アプリケーションのコード変更やデプロイを伴わずに機能を追加できます。
3. 効率的な管理
複数のアプリケーションに共通の設定を適用することで、管理の一貫性と効率を向上。
4. 情報漏洩リスクの低減
サーバー情報を隠すことで、攻撃者が利用可能な情報を最小限に抑制。
デメリット
1. 設定の複雑化
ヘッダー操作設定が増えることで、誤設定や管理の煩雑化のリスクが伴います。
2. ヘッダーの制限
ALBで操作可能なヘッダーは限定的であり、特定のカスタムヘッダーには対応していない場合があります。
3. 学習コスト
新機能を活用するためには、ALBの設定方法やHTTPヘッダーの知識を習得する必要があります。
利用方法
- AWS Management Consoleで設定
- Application Load Balancerの設定画面からヘッダー操作機能を有効化。
- カスタムヘッダーの挿入
- セキュリティヘッダーを追加し、ポリシーを一元的に適用。
- リネーム設定の適用
- 必要に応じて、TLS関連ヘッダーをアプリケーションが期待する形式に変更。
- ログとモニタリング
- CloudWatchを活用して、ヘッダー変更後の影響をモニタリング。
まとめ
AWS Application Load Balancerの新しいヘッダー操作機能は、セキュリティ強化とトラフィック管理の一元化を実現します。これにより、アプリケーションコードを変更せずに、複数アプリケーションに対するポリシー適用が可能となり、運用の効率化が期待できます。一方で、設定の複雑化やヘッダー操作の制限もあるため、導入前に詳細な計画が必要です。
詳細は、公式発表ページをご覧ください。