AWSは2024年11月、Amazon CloudWatch SyntheticsでPlaywrightランタイムのサポートを開始しました。この新機能により、複雑なユーザージャーニーを効率的に監視し、詳細な診断が可能となります。特にNode.jsを使用したカナリア作成が簡素化され、従来のフレームワークで難しかったシナリオにも対応できます。
Playwrightランタイムとは?
Playwrightは、Microsoftが開発したオープンソースのブラウザ自動化フレームワークです。多様なブラウザ(Chromium、Firefox、WebKit)に対応し、複雑な操作を伴うWebアプリケーションの自動化テストや監視に適しています。
CloudWatch SyntheticsはこのPlaywrightランタイムを活用し、複雑なブラウザ操作を含むカナリア(監視スクリプト)を作成できるようになりました。特に以下の点で従来のランタイムを超える機能を提供します:
新機能の特徴
- マルチタブ操作のサポート
- 複数のタブを使用した複雑な操作をシミュレーション可能。
- 詳細なログ管理
- 実行ログが直接CloudWatch Logsに保存され、Logs Insightsを利用した検索や分析が可能。
- 失敗時のアーティファクト生成
- タイムアウトやエラー時にもレポート、メトリクス、HAR(HTTP Archive)ファイルを自動生成。
- JSONファイルによる設定
- JSON形式でカナリアを設定し、簡素化された管理が可能。
- Node.jsベースのスクリプト作成
- Node.jsを利用した柔軟なスクリプト作成が可能で、開発者がPlaywrightのAPIを直接活用可能。
想定される利用用途
- 複雑なユーザージャーニーの監視
- ショッピングカートの操作やマルチステップフォームの送信など、複雑なWebアプリケーションのユーザーフローを監視。
- Webアプリケーションの健全性確認
- サインアップ、ログイン、検索機能など、主要な機能が正常に動作しているか定期的にチェック。
- 障害発生時の迅速なトラブルシューティング
- 詳細なログとアーティファクトにより、問題箇所を特定して迅速に修正。
- サービスレベル合意(SLA)の監視
- 複数の地域やブラウザでの動作を定期的に監視し、SLAを確保。
メリット
1. 高度な監視機能
Playwrightのサポートにより、従来のランタイムでは困難だった複雑な操作を含むシナリオを監視可能。
2. トラブルシューティングの迅速化
CloudWatch Logsとの連携で、問題の根本原因を迅速に特定。
3. 簡素化された設定
JSON形式でのカナリア設定により、柔軟性を維持しつつ管理が簡素化。
4. 開発者フレンドリー
Node.jsスクリプトの利用により、既存のPlaywrightスクリプトを簡単に統合可能。
デメリット
1. 学習コスト
新たにPlaywrightのAPIや設定方法を学ぶ必要があり、既存のフレームワークに慣れている場合は移行に時間がかかる。
2. 既存スクリプトの移行作業
従来のランタイムで作成されたカナリアをPlaywrightに移行する際、追加の作業が必要になる。
3. 初期設定の複雑さ
CloudWatch LogsやPlaywrightの設定を正確に行う必要があり、技術的なハードルがある。
利用方法
- Playwrightランタイムの設定
- AWS Management ConsoleでPlaywrightランタイムを選択し、新しいカナリアを作成。
- カナリアスクリプトの記述
- Node.jsでPlaywrightを使用してスクリプトを作成し、ユーザーの操作をシミュレート。
- JSONファイルでのカナリア設定
- JSON形式でカナリアの動作条件を記述し、柔軟にカスタマイズ。
- CloudWatch Logsでの監視
- 実行ログをCloudWatch Logsに保存し、Logs Insightsを利用して詳細な分析を実施。
詳細な手順は、AWS公式ドキュメントをご参照ください。
まとめ
Amazon CloudWatch SyntheticsのPlaywrightサポートにより、複雑なWebアプリケーションの監視がより効率的かつ詳細に行えるようになりました。特に、マルチタブ操作や詳細なログ管理が可能になったことで、Webアプリケーションの健全性を高い精度で維持できます。一方、導入には学習コストや既存スクリプトの移行作業が伴うため、慎重な計画が求められます。
詳細は、公式発表ページをご覧ください。