AWSは2024年11月にAmazon CloudFrontの新機能として、CloudFront Functionsを使用したオリジンの動的変更をサポートすると発表しました。この機能により、リクエストごとにオリジンサーバーを動的に変更でき、柔軟なコンテンツ配信と効率的なトラフィック管理が可能になります。
本記事では、この新機能の詳細、活用方法、メリット・デメリットを解説します。
CloudFront Functionsによるオリジン変更の概要
CloudFront Functionsは、軽量なJavaScriptコードを使用して、リクエストまたはレスポンスをリアルタイムでカスタマイズできるAmazon CloudFrontの機能です。今回のアップデートで、以下の操作が可能になりました:
1. オリジンプロパティの動的上書き
リクエストごとにオリジンの設定を変更できるようになりました。たとえば、特定の条件に応じて異なるオリジンサーバーにリクエストを転送することが可能です。
2. 別オリジンへのリクエスト転送
CloudFrontディストリビューション内の他のオリジンや、外部のHTTPエンドポイントにリクエストを動的に転送できます。
これにより、キャッシュミスやユーザーの地理的位置に基づいたリクエストルーティングを簡単に実現できます。
想定される利用用途
1. 地理的ルーティング
ユーザーの地理的位置に基づいて最も近いAWSリージョンのオリジンにリクエストを転送することで、レイテンシを最小化できます。
2. 負荷分散
トラフィックが増加した場合、複数のオリジンサーバーにリクエストを分散させ、システムの安定性を向上させることができます。
3. A/Bテストの実施
異なるオリジンを使用して、コンテンツやサービスのバリエーションをユーザーに提供し、効果を測定できます。
4. バックアップオリジンの利用
プライマリオリジンが利用不可の場合にバックアップオリジンを動的に選択することで、高可用性を確保できます。
メリット
1. 高速処理と低コスト
CloudFront Functionsは、ミリ秒単位の処理時間で動作し、従来のLambda@Edgeと比較してコストを削減できます。
2. 柔軟なオリジンルーティング
リクエストごとに条件を設定し、動的にルーティングを変更できるため、多様なビジネス要件に対応可能です。
3. 簡単な統合
既存のCloudFrontディストリビューションに簡単に統合でき、オリジン変更を手軽に実装できます。
デメリット
1. 複雑な処理には非対応
CloudFront Functionsは軽量な処理に最適化されているため、複雑なロジックや長時間の処理を必要とする場合はLambda@Edgeを利用する必要があります。
2. デバッグが難しい
エッジ環境での動作となるため、ローカルでのテストやデバッグが制限され、トラブルシューティングに工夫が必要です。
3. 学習コスト
JavaScriptでの軽量関数開発に慣れていない場合、一定の学習コストが発生します。
利用方法
- CloudFront Functionsの作成 AWS Management ConsoleまたはCLIでCloudFront Functionsを作成し、JavaScriptコードを記述します。
- ディストリビューションに関連付け 作成した関数をCloudFrontディストリビューションに関連付けます。リクエストやレスポンスのトリガー条件を設定します。
- 実装テストと監視 リクエストのルーティングが正しく機能しているかテストし、CloudFrontの監視ツールでパフォーマンスを確認します。
詳細な手順は、AWSドキュメントをご覧ください。
まとめ
Amazon CloudFrontが提供するCloudFront Functionsによるオリジン変更機能は、コンテンツ配信の柔軟性と効率性を大幅に向上させます。地理的ルーティングや負荷分散、A/Bテストなど、さまざまなユースケースでの活用が期待されます。一方、複雑なロジックには不向きであるため、要件に応じてLambda@Edgeとの使い分けを検討することが重要です。
詳細については、公式ページをご参照ください。