2024年12月1日、Amazon Web Services(AWS)は、Amazon Bedrockのナレッジベースにおいて、RAG(Retrieval-Augmented Generation)評価機能のプレビュー提供を開始しました。この新機能により、ユーザーはナレッジベースを活用したRAGアプリケーションの情報検索および生成コンテンツの品質を効率的に評価できるようになります。
アップデートの概要
RAG評価機能は、Amazon Bedrockのナレッジベースを基盤としたアプリケーションの性能を多角的に評価するためのツールです。ユーザーは、情報検索のみ、または情報検索とコンテンツ生成の両方を評価対象として選択できます。評価は、LLM-as-a-Judge技術を活用して行われ、複数の評価モデルから選択可能です。
具体的な評価指標として、情報検索の評価では「コンテキストの関連性」や「カバレッジ」などが含まれます。また、情報検索と生成の評価では、「正確性」「完全性」「忠実性(ハルシネーション検出)」といった品質指標に加え、「有害性」「回答拒否」「ステレオタイプ」といった責任あるAIの指標も設定可能です。さらに、異なる設定やモデルを用いた評価ジョブ間での比較もサポートしており、チャンク戦略やベクトル長、生成モデルの違いによる性能差を分析できます。
想定される利用用途
- チャットボットの応答品質評価: ユーザーとの対話における応答の正確性や関連性を評価し、サービス品質の向上に役立てる。
- コンテンツ生成システムの検証: 自動生成された記事やレポートの内容が事実に基づいているか、ハルシネーションが含まれていないかを確認する。
- 検索エンジンの結果精度向上: ユーザーのクエリに対して適切な情報が提供されているかを評価し、検索アルゴリズムの改善に活用する。
- AIモデルの責任ある利用の検証: 生成されたコンテンツが有害でないか、ステレオタイプを含まないかなど、倫理的な観点からの評価を行う。
メリット
- 迅速かつ低コストな評価: LLM-as-a-Judge技術を活用することで、人手による評価と比較して時間とコストを大幅に削減可能。
- 多様な評価指標の提供: 品質面だけでなく、倫理的観点からの評価指標も設定でき、包括的なモデル評価が可能。
- 設定間の比較分析: 異なるモデル設定やデータ処理手法による性能差を容易に比較でき、最適な構成を選定しやすい。
- ガードレールとの統合: Amazon Bedrock Guardrailsと直接統合することで、より徹底したテストと安全性の確保が可能。
デメリット
- LLMのバイアス影響: 評価に使用するLLM自体が持つバイアスが、評価結果に影響を及ぼす可能性がある。
- プレビュー版の制約: 現時点ではプレビュー提供であり、全機能が揃っていない可能性や、予期せぬ不具合が存在する可能性がある。
- 評価モデル選択の難易度: 適切な評価モデルを選ぶためには、専門的な知識や経験が求められる場合がある。
- 設定の複雑性: 多様な評価指標や設定項目があるため、最適な評価環境を構築するには時間と労力が必要となる。
まとめ
Amazon BedrockのナレッジベースにおけるRAG評価機能のプレビューリリースは、RAGアプリケーションの性能評価を効率化し、品質向上を促進する重要なステップです。LLM-as-a-Judge技術を活用した多角的な評価指標の提供により、ユーザーは迅速かつ低コストでモデルの精度や倫理的側面を検証できます。ただし、プレビュー版であることやLLMのバイアス影響など、導入に際しては注意が必要です。今後の正式リリースに向けて、さらなる機能拡充と改善が期待されます。
公式サイトはこちら: Amazon Bedrock、ナレッジベースのRAG評価機能をプレビューリリース